居抜きとスケルトンの違いと選び方
造作譲渡料の判断と5つの落とし穴
居抜きは「安く早く開けられる」と言われますが、実際に見てきた現場では、引き継いだ設備が使えず結局入れ替えになったという例が少なくありません。判断の分かれ目は、造作譲渡料の中身をどこまで確認できたかです。
このページでわかること
結論居抜きとスケルトンの違い
居抜き物件は、前の借主の内装・厨房設備が残ったまま引き渡される物件です。スケルトン物件は、コンクリートの躯体だけの状態で、内装も設備もこれから作ります。 違いは工事費だけではありません。後から変更できる範囲が大きく異なります。
| 項目 | 居抜き | スケルトン |
|---|---|---|
| 初期費用 | 抑えられる(ただし造作譲渡料が別途) | 大きい(内装・設備を一から作る) |
| 開業までの期間 | 短い。工事期間が圧縮できる | 長い。設計から施工まで数か月 |
| 設備容量 | 前の店の業態に依存する | 業態に合わせて計画できる |
| レイアウトの自由度 | 低い。給排水とダクトの位置で決まる | 高い。動線から設計できる |
| 設備の劣化 | 不明な部分が残る。製造年の確認が必須 | すべて新規(中古機器を入れる場合を除く) |
| 原状回復 | 契約内容による。スケルトン返しを求められることがある | スケルトン返しが原則 |
居抜きで借りたのに、退去時はスケルトンに戻して返す契約になっている物件があります。この場合、自分が作っていない内装や設備の撤去費まで負担することになります。解体費は坪あたりで数万円規模になるため、契約前に「どの状態で返すのか」を書面で確認してください。
お金の話造作譲渡料は何に対して払うのか
造作譲渡料は、残っている内装・厨房設備を前の借主から買い取る費用です。賃料とは別に、前借主(または仲介する業者)へ支払います。金額は数十万円から、設備の充実した物件では数百万円になることもあります。
まず、譲渡の対象範囲を一覧にしてもらう
口頭で「厨房機器一式」と言われて契約すると、後から揉めます。造作譲渡契約書に品目リストを付けてもらうのが基本です。リストには次を入れてもらってください。
- 機器名・メーカー名・型番
- 製造年(銘板に記載があります。写真で残しておくと確実です)
- 動作するかどうか(通電・点火を実際に確認したか)
- その機器の所有権が前借主にあるか(リース中・レンタル中の物は譲渡できません)
製氷機やビールサーバー、食器洗浄機は、リース契約やメーカー無償貸与になっている場合があります。これらは前借主の所有物ではないため、造作譲渡の対象になりません。契約後に引き上げられて、その分を買い直したという例は珍しくありません。リストに所有区分の欄を作ってもらってください。
払う価値があるかの考え方
判断はシンプルです。「同じ構成を自分で揃えたらいくらか」を出して、造作譲渡料と比べる。中古で揃えた場合の金額と比較して、明らかに高ければ交渉の余地があります。 当サイトの無料診断で必要機器の一覧と概算費用を出しておくと、この比較がその場でできます。
要注意居抜きの5つの落とし穴
1. 前の店の業態が違うと、設備容量が合わない
カフェの居抜きにラーメン店を入れる、といったケースです。カフェはガスをほとんど使いませんから、引込管の口径も排気フードの能力も、麺茹で機と寸胴には足りません。 内装は使えても、ガス工事とフード工事で結局まとまった金額になります。設備容量の見方は 電気・ガス・給排水の容量 にまとめています。
2. 製造年が古く、残りの寿命が短い
業務用の冷凍冷蔵庫や製氷機は、使用環境にもよりますが、おおむね7〜10年程度で更新を検討する機器です。譲り受けた時点で10年を超えていれば、開業後すぐに故障・更新の可能性があります。 特に、修理部品の保有期間を過ぎた機種は直せずに買い替えになります。製造年は必ず確認してください。
3. 保健所の施設基準を満たしていない
前の店が営業できていたからといって、そのまま許可が下りるとは限りません。基準の運用は変わりますし、業態が変われば必要な設備も変わります。 特に手洗い設備の位置と数、シンクの槽数、食品の保管設備は、業態によって指摘が入りやすい箇所です。詳しくは 保健所の施設基準 をご覧ください。
4. 排気・給気のバランスが崩れている
前の店の排気フードが残っていても、能力が足りているとは限りません。フードの寸法は、下に置く加熱機器の大きさに対して決まります。 機器を大きいものに替えるとフードからはみ出して煙を捕集できません。給気が不足すると扉が重くなり、ガス機器の燃焼も不安定になります。→ 排気フードとダクト
5. 見えない部分の劣化
グリストラップの内部、排水配管の詰まり、床下の防水、ダクト内部の油汚れ。いずれも内見では見えませんが、開業後に問題になると営業を止めて対応することになります。 ダクト内部の清掃履歴は前借主に確認しておくと安心です。
判断軸居抜きが得になる条件
- 前の店と業態が近いガス容量・排気能力・給排水の位置がそのまま活きます
- 閉店から日が浅い設備の劣化が進んでおらず、動作確認も取りやすい
- 譲渡リストが型番・製造年つきで出てくる中身が確認できる物件は信頼できます
- 造作譲渡料が、同構成を中古で揃える額を下回る数字で比較できていることが前提です
- 開業時期を早めたい工事期間の圧縮は、家賃の発生期間にも効いてきます
- 業態が大きく違う結局は設備をやり直すことになりがちです
- 厨房の位置を動かしたい給排水とダクトの位置が変わると工事は大掛かりになります
- 製造年が10年前後の機器が中心更新費用を初期費用に見込んでおく必要があります
- 退去時にスケルトン返しの条件が付いている撤去費の負担が二重になります
- 厨房の作業効率を最優先したい動線から設計できるのはスケルトンだけです
印刷して持って行く内見時の確認リスト
- 造作譲渡の対象品目リストはあるか。型番と製造年は載っているか。
- リース中・レンタル中の機器は混ざっていないか。所有区分は明記されているか。
- 電源を入れて動くか。冷蔵庫は庫内温度が下がるところまで確認したか。
- ガスの種類(都市ガス/LPG)は、これから買う機器と一致するか。
- 排気フードの寸法は、置く予定の加熱機器を覆えるか。
- グリストラップの容量と、清掃できる位置かどうか。
- ダクト内部の清掃はいつ行われたか。
- 退去時の原状回復条件(現状渡し/スケルトン返し)はどちらか。
- 前の店の閉店理由。立地の問題であれば、自店でも同じことが起きます。
- 搬入経路。入れ替える機器が通るか。→ 搬入と設置
費用費用のかかり方の違い
| 費目 | 居抜き | スケルトン |
|---|---|---|
| 造作譲渡料 | 発生する | なし |
| 内装工事 | 部分的な手直し中心 | 全面。坪単価で見積もられます |
| 厨房機器 | 不足分・更新分のみ | 全機器 |
| 設備工事(ガス・電気・給排水) | 既存を活かせれば軽い。業態が違うと重い | 全面。容量計算からの設計になります |
| 排気・ダクト | 既存の能力次第 | 全面 |
| 工事期間中の家賃 | 短い | 長い。フリーレント交渉の対象になります |
金額の全体像は 飲食店の開業資金、機器単体の相場は 厨房機器の価格相場一覧 にまとめています。
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居抜きの判断で難しいのは、「残す機器」と「入れ替える機器」を分けたときに、レイアウトが成立するかどうかです。既存の給排水とダクトの位置を前提に配置を検討すれば、造作譲渡料を払う価値があるかを図面のうえで判断できます。
- 既存設備を前提としたレイアウト/給排水・ガス・ダクトの位置から検討
- 残す/入れ替えるの仕分け/製造年と業態適合から判断
- 入れ替え費用の概算/造作譲渡料と比較できる形で提示
よくある質問
造作譲渡料の相場はいくらですか?
設備の内容と残存価値で決まるため、一律の相場はありません。数十万円から数百万円まで幅があります。判断の方法は、譲渡リストと同じ構成を中古で揃えた場合の金額を算出し、それと比較することです。提示額が明らかに上回るなら交渉の材料になります。
居抜きの機器はそのまま使って大丈夫ですか?
製造年を確認してください。業務用の冷凍冷蔵庫や製氷機は、使用環境にもよりますがおおむね7〜10年程度で更新を検討する機器です。修理部品の保有期間を過ぎた機種は、故障しても直せず買い替えになります。通電して庫内温度が下がるところまで確認してから判断してください。
造作譲渡リストにリース中の機器が入っていました。どうなりますか?
リース中・レンタル中の機器は前借主の所有物ではないため、譲渡の対象になりません。契約後にリース会社が引き上げるため、その分は自分で用意することになります。リストに所有区分の欄を作ってもらい、契約前に確認してください。
居抜きなら保健所の営業許可は簡単に下りますか?
前の店が営業できていたことは、許可が下りる保証にはなりません。基準の運用は変わりますし、業態が変われば必要な設備も変わります。手洗い設備の位置と数、シンクの槽数などは指摘が入りやすい箇所です。図面を持って所轄の保健所へ事前相談することをおすすめします。
さらに詳しい質問と回答は よくある質問ページ にまとめています。
まとめこの記事の要点
- 違いは工事費だけではなく、後から変更できる範囲。居抜きは給排水とダクトの位置でレイアウトが決まる。
- 造作譲渡料は型番・製造年・所有区分つきの品目リストをもらってから判断する。
- リース中・レンタル中の機器は譲渡できない。契約後に引き上げられる。
- 前の店と業態が違うと、ガス容量と排気能力が足りず結局やり直しになりやすい。
- 退去時にスケルトン返しの条件が付いていないか、契約前に書面で確認する。
居抜きが安いかどうかは、物件ごとに答えが変わります。判断できるのは、譲渡リストの中身と、自分で揃えた場合の金額を並べて比べたときだけです。内見の前に必要機器の全体像を作っておくと、その場で判断できるようになります。
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